相続税対策に生前贈与を活用する前提として、相続税の節税のためにあえて贈与税が課税されることを選択することになります。
相続税の代わりに贈与税が課税されるため、できる限り贈与税も少なくしたいと考えるのではないかと思います。
そこで、贈与税を節税するにはどうすれば良いのか?を検討していきます。
暦年贈与により贈与税が課税される場合には、次の2つがポイントになります。
(1)
贈与税は毎年1月から12月の間に贈与された財産に対して課税される
(2)
贈与税は財産を贈与された人に対して課税される
(事例1)
子供Aは、父から100万円、母から30万円の現金の贈与を受けました。
このとき、子供Aは130万円もらったことになりますので、子供Aに対して贈与税が課税されます。
(事例2)
子供Bは、父から現金100万円の贈与を受けました。
子供Cは、父から現金30万円の贈与を受けました。
このとき、子供Bと子供Cは現金をもらったことになりますので、贈与税が課税される可能性があります。
ただし、贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、この事例では子供B・子供Cともに贈与税は課税されません。
1 . 贈与税の基礎控除110万円をうまく利用する
暦年贈与には、1年間に110万円の基礎控除があります。
年間110万円までの贈与であれば、贈与税は課税されません。
贈与税の基礎控除110万円は毎年利用することができるため、毎年コツコツと生前贈与をしていくことで相続税対策の効果が大きくなってきます。
例えば、子供2人に100万円ずつ毎年生前贈与をしていけば、10年後には2000万円の財産が減ったことになります。
この2000万円は生前贈与により子供の財産になりましたので、この2000万円に対しては相続があっても相続税は課税されません。さらに、この10年間の贈与税は「0円」です。
生前贈与を工夫することで、相続税も贈与税も払わずに財産を子供に渡すことができます。
ただし、生前贈与による相続税対策は、毎年の節税効果はそれほど大きくありません。
そのため、時間をかけて長期的にコツコツと生前贈与を行うことで、相続税対策の効果が大きくなっていきます。
相続があった場合には、相続財産を引き継ぐのは相続人です。
ところが、生前贈与の場合、財産をあげる人の意思によって財産をもらう人を自由に決めることができます。
配偶者や子供だけではなく、友人やお世話になった方に対しても生前贈与をすることができます。
例えば、配偶者・子供2人・孫2人の合計5人に生前贈与(一人当たり100万円)をしたとすると、一年間で500万円の財産を贈与することができます。
10年間で5000万円の財産を生前贈与することができます。
このとき、3人に生前贈与をしたとすると、年間300万円、10年間で3000万円の贈与しかできません。
もし、ここで500万円を一人に対して一度に生前贈与をすれば、贈与税は53万円課税されます。
これを2年間にわたって500万円を生前贈与することにすれば、年間250万円の贈与となります。
贈与税は年間14万円を2年分ですので、総額28万円で済みます。
2年に分けることで贈与税の基礎控除110万円を2回使えることになるため、贈与税を減らすことができます。
この事例からわかることは、人数を増やせば相続税対策としてより効果が出てくるということです。
さらに、生前贈与をする期間が長くなればなるほど相続税対策に効果が出てくることがわかります。
相続税対策をより効果的にする生前贈与は、祖父母から孫に贈与を行うことです。
通常の場合、親から子供へ財産が相続され、相続税を払って子供の財産になります。
将来的には、子供から孫へ財産が相続され、相続税を払って孫の財産になります。
このように、相続税を2回払わないと親から孫へ財産を移すことができません。
ここで、親から孫へ生前贈与した場合は、贈与税を一度払うだけで財産は孫に移転します。
さらに、110万円までの贈与であれば、贈与税は非課税となります。
相続税対策に生前贈与を活用するときは、親から子供への贈与よりも、祖父母から孫へ行うことが効果的です。
祖父母が孫の教育費のために現金を出したとしても、基本的に贈与税はかかりません。
高校や大学の入学金、授業料などを必要なときに必要な金額だけ現金を渡すことで、贈与税は非課税とされています。
教育費の贈与は贈与税の非課税とされていますので、年間の基礎控除110万円を超える贈与をしても贈与税はかかりません。
このように、孫の教育費としての生前贈与は相続税対策に効果的です。
教育費といっても、世間一般的にみて常識の範囲内の教育費に限られます。
例えば、医学部の学費や海外留学など世間一般的にみて常識の範囲を超えると考えられる学費の贈与については、贈与税が課税される可能性がありますので注意が必要です。
また、高校や大学の授業料一年分をまとめて一度に現金を渡せば、贈与税が課税されますので注意が必要です。
そのほか、入学金や授業料としてもらった現金を貯金した場合や定期預金などにした場合も、贈与税が課税されます。
このように、贈与の目的を「教育費のため」と明確にしておかないと贈与税がかかる可能性がありますので注意が必要です。