贈与税の申告状況と相続税対策に生前贈与が活用される傾向
相続税対策として最も基本的な手法である生前贈与。
相続税対策の基本中の基本であることから、他の人はどのように生前贈与を活用しているのかが気になるのではないでしょうか。
国税庁から発表される贈与税の申告状況や課税状況などのデータを分析することで、他の人がどのように生前贈与を相続税対策に活用しているのかが見えてきます。
①贈与税の申告状況
平成24年5月に国税庁から公表されました「平成23年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、次のデータが浮かび上がってきます。
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平成23年分の贈与税の申告書についてのデータであること
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平成23年分の贈与税の申告書を提出した人は42万7000人(前年は39万5000人)
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平成23年分について贈与税が課税された人は27万4000人(前年は24万3000人)
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平成23年分の贈与税の納税額は1419億円(前年は1306億円)、一人当たりの納税額は52万円(前年は54万円)
(注) 翌年3月末日までに提出された申告書の計数である。
(出典:国税庁資料)
②暦年贈与と相続時精算課税制度の申告状況
(暦年贈与)
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贈与税の申告書を提出した人のうち、暦年課税により申告した人は37万9000人(前年34万5000人)。
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贈与税の申告書を提出した人のうち、贈与税が課税された人は27万1000人(前年24万人)。
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贈与税の申告書の納税額は1228億円(前年1109億円)、一人当たりの納税額は45万円(前年46万円)。
(相続時精算課税制度)
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相続時精算課税制度により申告した人は4万9000人(前年5万人)。
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相続時精算課税制度により贈与税が課税された人は3000人(前年とほぼ同じ)。
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相続時精算課税制度による納税額は191億円(前年197億円)、一人当たりの納税額は636万円(前年656万円)
(注) 1 翌年3月末日までに提出された申告書の計数である。
2 相続時精算課税(平成15年分以降)に係る人員には、暦年課税との併用者を含んでいる。
(出典:国税庁資料)
平成22年において贈与された財産はおよそ9000億円、それに対して課税された贈与税は1154億円となっています。
|
暦年贈与 |
相続時精算課税 |
人数 |
贈与財産金額
(百万円) |
贈与税額
(百万円) |
人数 |
贈与財産金額
(百万円) |
贈与税額
(百万円) |
平成19年 |
270,857 |
866,027 |
81,534 |
89,571 |
1,187,807 |
27,443 |
平成20年 |
252,403 |
823,657 |
86,273 |
74,138 |
934,425 |
18,924 |
平成21年 |
246,254 |
795,253 |
83,522 |
66,505 |
834,686 |
22,182 |
平成22年 |
261,143 |
900,372 |
115,405 |
50,663 |
628,754 |
19,902 |
(出典:国税庁資料)
平成22年において暦年贈与により贈与された財産のうち、現金・預貯金が37%と最も割合が高くなっています。
ところが、相続時精算課税により最も多く贈与された財産は土地でおよそ40%を占めています。
暦年贈与の場合には110万円の非課税枠を使うために簡単に贈与できる現金・預貯金が選ばれているものと推測できます。
また、相続時精算課税の場合は、2500万円の非課税が使えるため高額な土地が選ばれているものと推測できます。
財産の種類 |
暦年贈与 |
相続時精算課税 |
贈与財産金額
(百万円) |
構成比 |
贈与財産金額
(百万円) |
構成比 |
土地 |
258,949 |
28.8% |
252,262 |
40.1% |
建物・構築物 |
54,097 |
6.0% |
39,539 |
6.3% |
有価証券 |
186,389 |
20.7% |
89,711 |
14.3% |
現金・預貯金 |
333,297 |
37.0% |
224,970 |
35.8% |
その他 |
67,195 |
7.5% |
22,638 |
3.6% |
合計 |
899,927 |
100% |
629,120 |
100% |
(出典:国税庁資料)
相続税対策に生前贈与を活用する場合、暦年贈与で長期間にわたりコツコツと行っていくことで節税効果が出てきます。
2.の贈与税の課税の状況からわかることは、暦年贈与による贈与税の実効税率は12.8%(1154億円÷9000億円)となっています。
相続税の最低税率は10%であることから、これを目安に生前贈与が行われているものと推測されます。
贈与税の実効税率が10%前後となるのは、贈与財産が500万円のときに10.6%、600万円のときに13.6%であることから、生前贈与が行われている目安は500万円から600万円程度であることが推測できます。