贈与税は、相続税を補うための税金です。
そのため、贈与税は相続税よりも税金の負担が大きい(税率が高い)仕組みになっています。
せっかく生前贈与をしても贈与税の負担が相続税よりも大きいとすれば、むしろ生前贈与を実行しないほうが有利となります。
そこで、暦年贈与を選択した場合に贈与税がどれくらい課税されるのか、を確認したいと思います。
次に、相続税対策に生前贈与を活用する事例をご紹介したいと思います。
相続税対策に生前贈与を活用するには、まず贈与税がどれくらいかかるのかを知っておくことがとても重要です。
例えば、300万円贈与したときの贈与税は19万円となり、贈与した300万円に対する贈与税の割合は6.3%ということになります。
●贈与金額と贈与税
贈与金額 |
贈与税 |
贈与税負担率 |
100万円 |
0万円 |
0 |
200万円 |
9万円 |
4.50% |
300万円 |
19万円 |
6.30% |
400万円 |
33.5万円 |
8.30% |
500万円 |
53万円 |
10.60% |
600万円 |
82万円 |
13.60% |
700万円 |
112万円 |
16% |
800万円 |
151万円 |
18.80% |
900万円 |
191万円 |
21.20% |
1000万円 |
231万円 |
23.10% |
次に、贈与税の計算方法の確認です。
贈与税は、次の算式により計算します。
贈与により取得した財産の価格-贈与税の基礎控除(110万円)=贈与税の課税価格(千円未満切捨)
贈与税の課税価格×税率=贈与税額(100円未満切捨)
贈与税の税率は、贈与税の課税価格により次の税率を適用します。
●贈与税の税率
贈与税の課税価格 |
贈与税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
0万円 |
200万円超300万円以下 |
15% |
10万円 |
300万円超400万円以下 |
20% |
25万円 |
400万円超600万円以下 |
30% |
65万円 |
600万円超1000万円以下 |
40% |
125万円 |
1000万円超 |
50% |
225万円 |
相続税対策に生前贈与を活用する目的の一つとして、相続財産を減らすことにあります。
簡単なお話ですが、被相続人が財産を持っているから相続税が課税されるため、財産を被相続人ではなく家族の誰かが持っていれば相続税は課税されないという理屈となります。
ここで、相続税対策に生前贈与を活用する事例をご紹介します。
(事例)
相続財産:2億円
将来の相続人:子供2人
将来課税されることが予想される相続税:3340万円
(相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」)
相続税の負担率:16.7%(3340万円÷2億円)
相続税の負担割合は全体の財産に対して16.7%であることから、贈与税の負担割合をこれ以下にすることができれば、生前贈与をしたほうが有利となります。
贈与金額が700万円のときの贈与税は112万円であることから、贈与税の負担率は16.0%となります。
贈与金額が800万円のときの贈与税は151万円であることから、贈与税の負担率は18.8%となります。
この事例の場合、生前贈与をする金額を700万円程度に抑えておくことで相続税対策に効果があるということになります。
この事例からわかることは、まず相続税がどれくらい課税されるのかの現状把握を行っておくことが必要です。
そうすることで、はじめて相続税対策に生前贈与をどのように活用していけば良いのかという計画を立てることができます。
◎生前贈与を相続税対策に活用するには早く始めるべし
生前贈与を相続税対策として活用するポイントは、贈与税の基礎控除110万円を有効に使うことです。
相続税対策に生前贈与を有効に活用するのであれば、今すぐに始めることが望ましいでしょう。
贈与税の基礎控除110万円は毎年利用することができます。
生前贈与の開始が一年遅れますと、110万円の基礎控除が一年分使うことができなくなるため、遅れれば遅れるほどロスが出ることになります。生前贈与はお元気な今から始めるべきです。
◎相続開始前3年以内の生前贈与には相続税が課税される
相続税対策に生前贈与を活用することは効果的です。
そのため、相続税を節税するため、相続が近くなってから贈与が行われることがあります。
ところが、相続税は相続開始前3年以内に行われた生前贈与について、相続税の計算上相続財産に含めることになっています。
早く生前贈与を行えば、相続開始前3年以内を気にすることなく、より多くの財産を子供や孫に移転することができます。
なお、この相続開始前3年以内に贈与された財産を相続財産に含められるのは、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した人に限られます。
そのため、将来的に相続人ではない孫などに贈与をすれば贈与税の課税だけで済み、相続税が課税されることはありません。
相続が近いことが予想されるときは、子供ではなく孫に生前贈与をすることが効果的です。
贈与税を節税しながら相続税対策に生前贈与を活用するには、長期的な計画が不可欠です。